彼の右眼は意に反して外側にシフトしまい、左眼だけで目標を見なくてはならなくなってしまいます。
つまり、ピッチャーの投げるボールを片目だけで見ながら打つことになり、ピッチャーの手を離れたボールを突然見失ったり、ボールとの
距離感がつかみにくかったりと…。マルチネス選手の場合は、特に左投手のときに苦労するようです。
この「斜視」の眼の持ち主はそう珍しくありませんが、プロ・スポーツの世界で、ましてやメジャー・リーグで大成するとはとても信じられない
ことであります。
時速140キロ以上のボールを眼で追い、その距離感をしっかり認識してバットで打つという仕事は、健全な眼の持ち主であっても大変な
能力を要求されるものです。
つまり、マルチネス選手の眼の問題は、野球ではとてつもなく大きなハンディとなるはずですし、彼がそのような眼の状態で13年間も
大リーグで成功してきたこと自体が奇跡に近いのです。
一般的な「斜視」の眼では、2つの眼の視線を同時に目標に向かって合わせるのは極めて困難ですが、幸いマルチネス選手の斜視の
場合は、努力すれば右眼は目標に向かって内側にシフトし、2つの眼で同時に目標を見ることが出来るのです。
ただし、普通の人よりかなり努力しないとだめで、特に疲れたときや気を抜いたときなどに斜視として顕在化してしまいます。
マルチネス選手はこの問題をどのようにして乗り越えてきたかといいますと、現在アメリカのプロスポーツの世界では「眼のトレーニング」
が当たり前になっています。
マリナーズでもこの眼のトレーニング「ビジョン・トレーニング」のプログラムを持ち、視機能の専門家であるオプトメトリーが担当しています。
マルチネス選手は入団以来、この問題を克服するために彼専用のプログラムを作り「眼のトレーニング」を続けてきました。
このような隠れた努力により、マルチネス選手は長い間メジャーで活躍することができ、2001年には、最優秀・指名打者のタイトルも
獲得しています。